周易

『周易』説卦伝の象意

『易林』の注釈で、尚秉和は「~の卦は…の意味になる」のような書き方をするのですが、『周易』説卦伝をそのまま引用している例もあれば、ときどき連想的な解釈をすることもあるので、その原案として『周易』説卦伝にある象意をまとめておきます。

 象意が出てくる背景は、とりあえず『周易正義』に依ってますが、『周易正義』そのままの順序ではないので、象意の解釈用として読んでもらえればと思います(すべてが納得できる説明だとは思ってないですが)

乾:健、天、圜(まるい)、父、君、玉(宝石)、金(金属)、寒、氷、大赤(とても赤い)、良馬・老馬・瘠馬(瘦せ馬)・駁馬(強い馬)、木果(果実)、首

 乾は天のこと。天は回旋(めぐ)ってやまないほど健やか、天は回るように動くので圜(まる)い、父というのは万物を始める上の物の意味、金(金属)や玉(宝石)というのは澄んでいて硬いため、寒い・氷というのは西北(乾の方位)のように冷えているから、とても赤いというのは盛りの太陽、健やかに馳けること馬のようで、よく馳せるのは良馬・長く馳せるのは老馬・疲れずに馳せるのは骨のある痩せ馬・力のあるのは牙のあって強い馬(駁馬)、木果(果実)は木になっている様子が天の星っぽいので、首は人の上のほうにあるので。

坤:順、地、母、布、釜、吝嗇(けち)、均、子、母牛(牛)、大輿(大きい乗り物)、文(模様)、衆(多い)、柄(え)、黒、腹

 坤は地のこと。地は天に順(したが)う、坤は地のように育てることを司るので母、地は広く物を載せるので布、物を成熟させるので釜、吝嗇なのは育てた物を動かさないため、均しいのは地が平らなので、子や母牛というのは育てることや大人しいことに繋がるため、大輿(大きい乗り物)というのは万物を載せるため、文(模様)というのはさまざまな物が雑多に乗っていて色が混ざっているため、衆(多い)とは物を多く載せるため、柄(え)というのは生物の根本なので、黒いのは陰が窮まった色、牛は重いものを背負い大人しいので、腹はものを多く蔵(しま)っているので。

震:動、雷、長男、玄黄(天と地の色が混ざるような)、敷(敷き広がる)、大塗(大きい路)、決躁(騒がしい)、蒼筤竹(若竹色の竹)、萑葦(竹の一種)、よく鳴く馬・馵足(後ろ足が白い馬)・的顙(額が白い馬)・作足(足をしゃしゃり出させる馬)、生えたての苗、極まれば健やか、蕃鮮(蕃:はびこる、鮮やか)、龍、足

 震は雷のこと。雷は万物を震(ゆら)すようなので動く、玄黄(天は玄:黒色、地は黄色)というのは天と地が混ざりあう春のなると春の雷が走るため、敷くというのは春のなると草が敷き詰めたように咲くため、大きい塗(路)とはさかんに往来して動き回るため、決躁(さわがしい)とは強い動き、蒼筤(若竹色)は春のきれいな色、萑葦は竹の一種、よく鳴く馬というのはその声が雷のように遠くに通るので、馵足(後ろ足が白い馬)・的顙(額は白い馬)というのは動くたびにちらちら見えるので、足がしゃしゃり出る馬というのは動きたがり健やかなこと、作物では生えたての苗が種を破って出てくるところ、初めて出てきた衝撃が極まれば健やかに安定する、蕃(はびこって)鮮やかな春の植物、龍は動く生き物、足は動くので。

巽:入、風、木、長女、縄直(墨縄)、工(加工)、白、長、高、進退、不果(果敢でない)、臭(香り・匂い)、寡髪(髪が少ない)、廣顙(広い額)、白眼が多い、近利(利に近付く)、市で三倍になる、極まれば躁、鶏、股(腿)

 巽は風のこと。風はどんなところにも入り込む、木は風のような柔らかさがあるので、風というのは柔らかい木を揺らして木となじむので、風が等しく行きわたること墨縄を木に当てるよう、工(加工)とは墨縄が施されること、白というのは風が余計なものを吹き飛ばしてすっきりしていること、長いというのは遠くまで行きわたる風、高いというのは風は高いところを吹くので、進退とは風が前後に動くこと、果敢でないとは風のように優柔に過ぎること、香りとは風に運ばれるので、髪が少ない・額が広いとは落ち葉が風で散った木から、白目が多い人ははらはらと落ち着きがない、利に近付いてくるのは落ち着きのない人に多い、市では三倍とは木を育てると市で三倍の利を生むので、極まると躁になるとは風が吹き回ることに似ているので、鶏は先んじて時を知り、腿は足に順って動くのが震より柔らかい巽に似ている。

坎:陷、水、中男、溝瀆(水路)、隠伏、矯輮(曲直する)、弓輪(弓と車輪)、加憂、心病、耳痛、血、赤、美脊(背中の美しい馬)、亟心(気持ちが急ぐ)、下首(下を向く)、薄蹄(蹄がすり減る)、曳く、多眚(災いが多い)、通じる、月、盗賊、堅くて芯の多い木、豚、耳

 坎は水のこと。水は険陥(くぼ)んだところに居るので陥る、水というのは北(坎の方位)の五行(五行説で水は冷たい北)なので(これは水は低湿地のように冷たいので、くらいのほうがいいと思う)、溝瀆(水路)とは水の流れるところ、隠伏とは地下水、矯輮(曲直する)とは水の形ない様子、弓とは噴き出す水、車輪とは廻る水、憂いを加えるとは気持ちが凹むこと、心病とは険難を愁うこと、耳が痛いとは北は耳(同じく五行説より)なので耳を坎(労:苦しませる)ので耳が痛い、血は人の身体を流れる水、赤は血の色、背中のきれいな馬とは坎の中にある陽のように一筋勁いものが通っていること、心が急ぐとは内側で陽の気が動きたがること、首を下に向けるとは水が下に向かうこと、すり減って薄い蹄とは水が地面を擦って流れるので、曳くとは水が地面を削って流れること、災いが多いとは陰が周りにある様子、通じるとは流れた先に穴があること、月は水の精、盗賊は地下水のごとく隠れる、硬くて芯材(硬い木材)の多い木とは中に陽が入っているため、豚は湿ったところに居て、耳は五行説で北方(水の方位)なので。

離:麗、火、中女、日(太陽)、電、甲胃、戈兵(武器)、大腹、乾卦、鱉(すっぽん)、蟹、蠃・蚌(貝)、亀、科上槁(科:洞ができて上の枝が枯れた木)、雉、目

 離は火のこと。火は物に燃え麗(付く)、火(五行説で南)は離(南)なので、太陽は火の精、雷は明るいことが火に似ている、甲冑は外が硬いのが陽を纏っているようなので、武器は外に硬いものを向けているので、大きい腹とは中に陰の気を抱いているので、乾卦(天)とは日が熾んに燃えるので、すっぽん・蟹・貝・亀とはみな外が硬い生き物、洞(うろ)ができて上の枝が枯れた木は中に陰の気があるので、雉は文様が華やか、目は五行の火なので。

艮:止、山、少男、径路、小石、門闕、果蓏(果:木の実、蓏:草の実)、閽寺(門の見張り)、狗、鼠、黔喙(山にいる獣)、堅くて節の多い木、狗(犬)、手・指

 艮は山のこと。山は静かに止まっている、止まるのは下に陰の気が溜まって阻むので、山は下に陰があり上に陽があるのが艮に似ているので、径路は山のあいだには澗道(谷の路)があるので、小石とは陽の気が少し(硬いものが少し)ある様子、門闕(門)とは通れる径路があって高く聳えるので、果:木の実と蓏:草の実は山で取れるので、門の見張りは人々の出入りを禁じるので、鼠は人の家に止まるので、(山にいる獣は山からの連想)、堅くて節の多い木とは山に生えている木は勁健で堅く節も多いこと、犬は出入りする人を見張るので、手指は物を止めるので。

兌:說(悦ぶ)、澤(水辺)、少女、巫、毀折、附決(熟柿が落ちる)、剛鹵(塩っぽい土地)、妾、羊、口・舌

 兌は澤のこと。澤はさまざまな物を潤し悦ばせるので説(悦)ぶ、澤(水辺)というのは兌の陰の気が小さいのが生えている植物の小さいことに似ているので、巫とは五事(貌・言・視・聴・思)のうち西が言に重なっていて兌は西にあり巫女は言葉を使うので、毀折(壊れる)・附決(熟柿が落ちる)は五行説で西が秋にあたるので秋の植物の様子、塩っぽい土地は水気が多いとなりやすいので、妾は妹(少女)が古くは姉の夫に妾として嫁いだので、羊は大人しいので、口舌も西が言なので。

 途中に出てきた長男・長女などは、陽が一番下にある震は長男、真ん中にある坎は中男、一番上にある艮は少男(少は若い)、陰が一番下にある巽は長女、真ん中にある離は中女、一番上にある兌は少女、陽だけなのは父、陰だけなのは母という感じです(これはあくまで個人的な感覚ですが、長は20代くらい、中は10代後半~20代初めくらい、少は10代前半くらいの雰囲気です。『周易』にも注釈にも書いてありませんが)

 一部は納得できないところもあるけど、それなりに頷ける理論だと思います。もっとも、これだけだと却って雑多な象意を並べただけになるので、個人的に最も核心にあると思われるイメージを書いておきます。

乾:自ら閉ざして玲瓏とした趣き、冷たく硬い水晶

坤:もったりと多くのものを含んでいる胎蔵世界

震:春雷の騒ぐ気急しさと鮮やかさ、生まれたての粗削りさ

巽:そわそわと落ち着けずに形を変える

坎:水の中に入ったように溺れたりトリップする

離:火の如き鳳凰が刺繍のある衣をひらひら纏った様子

艮:岩や藪に囲まれて動けない

兌:小さい喜びがいっぱいある尾瀬の池塘

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ぬぃ
占い・文学・ファッション・美術館などが好きです。 中国文学を大学院で学んだり、独特なスタイルのコーデを楽しんだり、詩を味わったり、文章書いたり……みたいな感じです。 ちなみに、太陽牡牛座、月山羊座、Asc天秤座(金星牡牛座)です。 西洋占星術のブログも書いています