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33-31  遯之咸・14-46  大有之升

本文

野有積庾、嗇人駕取。不逢狼虎、暮帰其宇。

注釈

通損。坤為野、為積、艮為庾、震為嗇人、為駕、艮手為取、艮為虎狼、艮在外故不逢。坤為暮、艮為守、伏震為帰。(天山遯から沢山咸へ)

遯から損になるときに通じる。遯の裏卦の坤は野(迭象)、積(出典不明)、艮は庾(閉じ込める倉)、遯or咸の裏卦の互体震は嗇人(出典不明)、駕(動く)、艮の手(説卦伝)なので取る、艮は虎狼(説卦伝)で、艮は外にあるので(内卦だと思うけど?)、「逢わない」。坤は暮(陰)、艮は守る(囲う)、裏卦の震なので帰る(震は外に出ていくなので)。

坤為野、為積、為庾。震為稼穡、為人、故曰穡人。艮為虎狼、艮伏故不逢。坤為莫、震為帰。(火天大有から地風升へ)

坤は野(迭象)、積(出典不明)、庾(内に蔵する)。升の裏卦震は稼穡・人(出典不明)なので、穡人(倉の役人)。大有or升の裏卦の互体艮は虎狼(説卦伝)、艮は裏卦なので「逢わない」。坤は莫(無い、陰なので)、震は帰る(震は外に出ていくなので)。

日本語訳

野には積まれた庾(倉)があって、嗇人(倉役人)は駕して取る。狼虎には逢わず、暮れては其の家に帰る。

解説

天山遯の上爻が変爻だと、沢山咸になります。なので、遯の上爻の爻辞を読んでいきます。

上九:肥遯、无不利。
肥(豊かな)遯(逃げ)なので、みな利がある。

上爻は遯の中でももっとも上手く逃げている遯なので、逃げていく先にはみな利がある、です。咸は感応なので、逃げていった先で穏やかな感応があることだと思われます。

一方、大有は火が天の上にあって、明々として君子は悪を遮り善を揚げて、天に順い命を休(大きくする)ようにして包容(大有)すること、升は地の中に木があるように、小さいものを積んで大きく育てていくことです。なので、実り豊かな秋の田で、嗇人(『周礼』にありそうで無いけど、嗇:倉なので倉に米などを入れる役人だと思います)が米を貰っていって、虎や豹などの恐ろしいものにも会わず、夕にはゆっくりと家に帰っていく様子は、悪を遮り善を揚げて、小さいものを育てているように穏やかな世です。

でも、遯から咸だと、逃げていった先でこのような豊かな秋の野はあるけれど、末世的な諦めからの遯で隠れ住む様子っぽいです(詩は同じなのに、雰囲気がまったく違う)。

余談

遯から咸になる例では、占例ではないですが張衡「思玄賦」にこのように解している例があります。

歴衆山以周流兮、翼迅風以揚聲。
二女感於崇岳兮、或冰折而不営。
天蓋高而為澤兮、誰云路之不平。
勔自強而不息兮、蹈玉階之嶢崢。

衆山(多くの山を)歴て以て周流し、翼は風よりも迅くして聲を揚げる。
二女は崇岳にて感応し、或いは冰折しても不営(悩まず)。
天蓋は高くしてそれも澤となって、誰が路の平らかならずと云うのか。
勔(つとめて)自強して不息(已まず)、玉階の嶢崢たるを蹈む。

遯の艮(山)を抜けて天の方に遯げていく(歴:経る)、翼は遯の下互巽の風を孕みて羽音を揚げ、その先に遯の互体巽(長女)と咸の上卦兌(少女)は高い山(艮)の上で感応するけれど、それでも余りの孤独さに冰が折れるように、玲瓏とした乾(強い徳)も兌になって砕けるけれどそれでも不営(気にせず)、平らかでない路を行く。勉めては自強して玉のようにひんやりと冷たくて高い天の階を行くように逃げていく……という解釈です。

一枚の絵のように解しているのがわかりますが、この「思玄賦」は後漢の中頃になって国政の衰微して、云いたいことは云えずに吉凶も倚伏しているときに深い(玄)ものに思いをめぐらした作品なので、遯して逃げよという占いなのですが、この諦めと隠棲的な雰囲気を繋して曰く

天長地久歲不留、俟河之清祇懐憂。
願得遠渡以自娯、上下無常窮六區。
超踰騰躍絶世俗、飄颻神舉逞所欲。
天不可階仙夫希、柏舟悄悄吝不飛。
松喬高跱孰能離?結精遠遊使心攜。
回志朅来従玄諆、獲我所求夫何思。(「思玄賦」より)

天は長く地は久しくして歲は留らず、河の清(澄む)のを俟(待っていては)ただ憂いを懐く。
願わくは遠く渡りて自ら娯しみ、上下は常なく六區(六合)を窮めんんと。
超踰騰躍 世俗を絶して、飄颻として神の挙がりて所欲(行きたいところを)逞(ほしいままにす)。
天は階を掛けられずして仙は稀なもの、柏の舟は悄悄(おろおろとして水を漂い)吝(恨みても)飛べず。
松喬(神仙)は高く跱(つま立って)誰が会えるものなのか、精(思い)を結びて遠遊して心を携(繋ぐ)。
志を回(戻して)朅来(帰っていっては)玄い諆(訓え)に従いて、私の求めるものを獲て思うところはないのだが。

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ぬぃ
占い・文学・ファッション・美術館などが好きです。 中国文学を大学院で学んだり、独特なスタイルのコーデを楽しんだり、詩を味わったり、文章書いたり……みたいな感じです。 ちなみに、太陽牡牛座、月山羊座、Asc天秤座(金星牡牛座)です。 西洋占星術のブログも書いています