本文(渙之蒙)
因禍受福、喜盈其室、求事皆得。
注釈
坤為禍、震為福喜、艮為室、坤多、故曰喜盈其室。(風水渙から山水蒙へ)
蒙の互体坤は禍(陰)、渙or蒙の互体震は福・喜(迭象)、艮は室(囲う物)、蒙の互体坤は多い(説卦伝)なので「喜盈其室」。
本文(益之離)
因禍受福、喜盈其室。
注釈
通坎。互艮為室、震為喜。(風雷益から離為火へ)
益から坎になるときに通じる。益の互体艮は室(囲う物)、震は喜(迭象)。
本文(需之旅)
因禍受福、喜盈我室、所願必得。
注釈
通節。坎為禍、震為福喜、艮為室。(水天需から火山旅へ)
需から節になるときに通じる。坎は禍(説卦伝)、旅の互体の裏卦震は福喜(迭象)、艮は室(囲う物)。
本文(既済之師)
因禍受福、喜盈其室。螟蟲不作、君無苛忒。
注釈
坤為禍、震為福、為喜、坎為室。巽為螟蟲、巽伏、故曰不作。震為君、坤為苛忒、震解、故無。(水火既済から地水師へ)
坤は禍(純陰)、師の互体震は福・喜(迭象)、坎は室(凹み)。師の裏卦の互体巽は螟蟲(迭象の虫)、巽は裏卦なので「不作(おこらない)」。震は君(迭象)、坤は苛忒(迭象の憂い?)、震は解けるなので、無という。
日本語訳
禍に因りて福を受け、喜びは其の室を盈す。求める事は皆な得られる。
禍に因りて福を受け、喜びは其の室を盈す。螟蟲(ずいむし)は不作(おこらず)、君は苛忒なし。(既済之師)
解説
渙之蒙は、渙の五爻が変わるときに同じなので、爻辞をみてみます。
九五:渙汗其大號、渙王居、无咎。
汗を渙(散らして)其れ大號して、王居に渙する。咎はない。
これは、渙(険難を吹き散らす)を王居(五爻)で大きく叫びながらするようにして、大いに険しいものを散釋させていく様子です。それが蒙になると「因禍受福、喜盈其室、求事皆得。」というのは、渙した後なので、蒙(わからない)こともみな知り得るという意味だと思ったりしています。
これで他の組み合わせを読んでみると
需:険しいものが前に在って、(ゆっくり備えて進むので)剛健にして険(坎)に陷らず、其の義は困窮しない
旅:山の上の火が動くように……旅の時義は大なるもの(小才の者には難しい)
益:上を損して下を益するので、民は悦ぶこと極まりない
離:日月は天に麗(附き)、百穀草木は土に麗き、明々と明るい火は正しさに麗き、そうして天下を化して成していく(ので、明々としているけど柔らかい)
のように、旅になるときは危うい旅でも先の備えや蓄えで「願うものも皆な得られる」ほどに上手く旅ができること(この旅は顛沛流離する様子です)、離になるときは先に下のものを益しておいたので、却ってその柔らかい化はよく行きとどく……という意味かもです。
ちなみに、既済之師のときは、
既済:終わって止まってしまうと乱れるのは、その道が窮まるから。……君子は災いを思いてこれを予め防ぐ(王弼は「存にして亡を忘れず、既済にして未済を忘れず」としている)
師:丈人(厳荘な雰囲気の人が見ていれば)吉、咎はない
のように、既に整っていても、未済だったときのことを忘れないで備えつづけるので(未済:禍、既済:福かも)、丈人(厳荘な人)が螟蟲(ずいむし)を防いで、君は苛(ひどくて)忒(たがう)こともない……のような印象です。