占例

32-33  恒之遯

本文

争訟之門、不可與鄰。出入有為、憂生我心。

注釈

乾為言、艮亦為言。兌為口、二至四兌反、與乾言相背、故曰争訟、義本夬・九四也。艮為門、伏震為出、巽為入。伏坤為憂、為心。(雷風恒から天山遯へ)

乾は言(出典不明)、艮も言(出典不明)。兌(恒の互体)は口(説卦伝)で、二~四爻は兌が裏卦なので、乾の言と背き合っているので「争訟」といい、意味は夬の四爻に基づいている。

艮は門(説卦伝)、恒の裏卦に含まれている震は出る(連想解釈)、巽は入る(説卦伝)。遯の裏卦の坤は憂・心(迭象)。

日本語訳

争訟(言い争い)のある門(家)は、隣に居られない。出たり入ったりしては為すこと有って、憂いが私の心に生じる。

解説

まず、上に書いた『周易』夬の四爻の爻辞を読んでみます(これが先秦の文章にありがちな逆説・仮定・受動・比喩が混ざりあった奇妙な言い回しで読みづらいのですが)

九四:臀無膚、其行次且。牽羊悔亡、聞言不信。
臀(尻)に膚(肌)がなくなるほど(追い立てられて)、その行く事は次且(詰まり切っていて)、羊を牽(引けば)悔いることは亡(無くなる)のに、言を聞いても信じてもらえない。

夬の四爻は、陽なので上に行きたいのですが、さらに上にある五爻の陽はなかなか動いてくれない。さらに下からは多くの陽に臀(尻)を押されるので詰まってしまう。羊を引くように五爻の陽をうまく動かせれば、悔いることもないほど上手くいくのに、五爻は言を聞いても信じてくれないので、色々と言い争うことになる、という繋がりでしょうか(ちなみに、夬の他の爻辞では言い争う様子はないと思います)。

たぶん夬の四爻が出てきたのは言い争うの繋がりで、恒のように「立つるに不易の方を以て」している人が遯(隠れる)として、不易(変わらない)ものは隠れる先にあるので、街のほうでは言い争いもあったという意味だと思ってます。

実占

これは、実は最近占ったときに出た卦なので、そのときの解釈も書いておきます。

まず、占った内容としては「ある予定に誘われたときに、無理して行けば途中から入って、途中で帰るような形で行けるけど、それで無理をしても体調崩しそうだし、向こうも全部手伝ってほしいのが本音ではある(具体的には、年末に燃やすために切った木を運んでほしいという話)」というときに、行くべきか断るべきかという質問でした。

おそらく「争訟之門、不可與鄰」というのは、様々に言いあって無理して話をつけるようなことはしないほうがいい、もっと不易(変わらない)方に居て、今回は手を引けという意味だと思って断りました。たぶん『荘子』人間世篇にいう「大(甚だ)政(手だて)は多く、法(やり方は色々ある)けど諜(筋)が通らない」みたいなことです。(出てきた詩は暗い印象だけど、むしろ気分的には楽になれたので、易林のぼんやりと伝える隠士的な感じ、とても好きです……)

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ぬぃ
占い・文学・ファッション・美術館などが好きです。 中国文学を大学院で学んだり、独特なスタイルのコーデを楽しんだり、詩を味わったり、文章書いたり……みたいな感じです。 ちなみに、太陽牡牛座、月山羊座、Asc天秤座(金星牡牛座)です。 西洋占星術のブログも書いています