本文
春城夏國、生長之域。可以服食、保全家國。
注釈
坤為城、為國。震為春、伏離為夏、故曰春城夏國。震為長生、為食、坤為家。震楽、故保全。(地天泰から地水師へ)
坤は城・国(迭象の墟から連想?)。震(泰・師の互体)は春(震・春・東は木)。(師の裏卦の天火同人にある)離は夏(離・夏・南は火)なので「春城夏国」という。震は長く生きる(東は生まれる方位)、食べる(迭象)。坤は家(迭象の墟より派生?)。震は楽しむ(出典不明)なので、保全(いつまでも続く)。
日本語訳
春の街に夏の国は、生長していく境内で、霊草を服食して、家国も保全(守る)べし。
解説
地天泰は、天地の気が大きく混ざりあって動盪する様子、地水師は地下水のように静かに多くの水を湛えた地という意味で、大きく動いた後には少しずつ安定期に入っていくような流れを描いた作品です。
その生長は、するすると伸びる夏の草木にように青々として潤いにも満ちていて、その生長のときをゆっくりと過ごすような気持ちは、神仙の術を知って、その境内はどこまでも落ち着いている様子、春の終わりには花のある庭の隅、夏になりそうな五月の中頃には静かな緑が育つ雰囲気だと思ってください(ちなみに、裏卦の泰之同人は全く雰囲気が違います……)
余談
この詩を別の作品で表すとしたら、江戸時代の九州・日田の詩人 広瀬淡窓のこれだと思います。
題藹山画
夏木結新陰、葱蘢殊可喜。
蝶心猶恋春、墻角一花紫。夏の木は新しい陰を結んで、葱蘢(ざわざわ)として殊に喜(愛)すべし。
蝶の心はまだ春を恋いていて、墻(籬)の角では一つの花の紫。
春城夏國は小さい庭やその庭に入る道を囲む垣のようなところにもあって、大きく爛漫とした春は終わったけど、この時期はかえって落ち着いた魅力があるような雰囲気です。昔詠んだ俳句だとこれ。神仙の句は、無季が意外と似合う。
社にも降りしきりたり蔦の花