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11-13  泰之同人

本文

多載重負、捐棄於野。予母誰子、但自労苦。

注釈

通師。坤為載負、為重、為野、為喪、故曰捐棄。坤為母、震為子、坎為労苦。三四句従宋本、汲古作「王母離子、思労自苦。」(地天泰から天火同人へ)

泰から師になるときに通じる。坤は背負う(説卦伝から派生)、重(地は重いので)、野(迭象)、喪う(連想解釈)なので捐棄(捨てる)。坤は母、震(泰の互体)は子(長男)、坎(裏卦の師から)は労苦(説卦伝)。

日本語訳

多く重負(重荷)を載せ、野に捐棄(捨て)ていく。予(私)の母は誰の子かも分からないが、ただ自ら労苦する。

解説

荷車に多くの荷物を載せているけど、重くて逃げきれないと知って、途中の野に荷物を捨てるとともに、自らの子も……ということが昔あって、今となっては私の母はどんな家の生まれかも分からないが、それでも私はさまざまに苦しんできたという、がさがさした哀しい詩です。

地天泰はうまく天地の気が混ざりあっているとき(混ざり過ぎなので、ある程度で止めるべき)、天火同人は広い野に意を同じくする者たちが集まりあって、上には広漠とした天が広がっているけど、下には火のような想いがあちこちに燃え合っている様子(後漢末のように群雄が並ぶ)がそれぞれ近くて、今まで停っていたものが掻き混ぜられて群雄の並び立つ世になるけど、その乱れた中には焼け爛れたような悲しみも多くあるという意味だと思ってください。

余談

この詩はどこまでも風景の質感が、王粲「七哀詩」其一に似ている(『易林』の中には、後の文学で描かれるような様々な原型が入っているようにも思えて、そういう方面から読んでも魅力的ですが、易からこの詩を作る感性も独特です)。

  七哀詩・其一
西京乱無象、豺虎方遘患。
復棄中国去、委身適荆蛮。
親戚対我悲、朋友相追攀。
出門無所見、白骨蔽平原。
路有飢婦人、抱子棄草間。
顧聞号泣声、揮涕独不還。
未知身死処、何能両相完。
駆馬棄之去、不忍聴此言。
南登霸陵岸、回首望長安。
悟彼下泉人、喟然傷心肝。

西京は乱れて象(形)もなく、豺虎はまさに患を構(遘)える。
私はまた中原を棄てて去り、身を委ねて荆蛮に適く。
親戚は私に対して悲しみ、朋友は追攀(追い従ってくる)。
門を出れば何も見えず、白い骨が平原を蔽う。
路には飢えた婦人があって、子を抱いて草の間に棄てる。
顧(振り返って)は泣き号ぶ声を聞いて、涕を揮(拭)って独りになって還(戻)らず。
身(みずから)の死ぬところも分からないのに、どうして両(二人)とも完(生きて)いられるのかと云っているのだろう。
馬を駆ってこの二人を棄てて去り、この言を聴くのに堪えずに、
南に行っては霸陵の岸に登り、回首(振り返っては)長安を望む。
あの下泉(墓に眠る安らかな世の)人も、喟然(あぁと云って)心肝(心)を傷つけるのだろうか。

後漢の終わりに、今まで都だった長安を棄てて南の楚に一人で向かっていくときに見た風景なのですが、人々が集まってはいつまでも割れている様子をどちらも書いていて赤黒い空のような詩だと思う。

ABOUT ME
ぬぃ
占い・文学・ファッション・美術館などが好きです。 中国文学を大学院で学んだり、独特なスタイルのコーデを楽しんだり、詩を味わったり、文章書いたり……みたいな感じです。 ちなみに、太陽牡牛座、月山羊座、Asc天秤座(金星牡牛座)です。 西洋占星術のブログも書いています