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37-42  家人之益

本文

天馬五道、炎火分處。往来上下、相随哭歌、凶悪如何。

注釈

震為馬、為大塗、艮為天、巽卦数五、故曰天馬五道。『晋書』天文志「王良、五星、一名天馬。」艮為火、正反艮、故曰分處。震為往、正反震、故曰往来上下。震為歌、震之反則哭矣。中孚・六二云「或泣或歌」林所本也。坤為凶悪。(風火家人から風雷益へ)

震は馬・大きい道(説卦伝)、艮(益の互体)は天(迭象)、巽の数は五(乾兌離震巽…)なので、「天馬五道」という。『晋書』天文志上に「王良は五つの星で、一名天馬ともいう」とある。艮は火(迭象)、ちょうど逆になっている艮(風火家人・風雷益の巽を上下逆にする?)なので、分かれて処(居る)。

震は往く(驚くから派生?)で、ちょうど逆になっている震(益の互体に含まれる?)なので、「往来して上下する」という。震は歌う(出典不明)で、震の逆になっているので、哭く(悲しんで歌う)になる。中孚の爻辞で六二に「或いは泣いて或いは歌う」とあるのは『易林』の詩が元にしている意。坤は凶悪(陰の極まり)。

日本語訳

天馬の五匹は、炎火して分かれ居る。往来して上下すれば、それに随って哭いては歌い、凶悪すぎている。

解説

天馬は星の名で『晋書』天文志上にこのようにあります。

王良五星、在奎北、居河中、天子奉車禦官也。其四星曰天駟、旁一星曰王良、亦曰天馬。其星動、為策馬、車騎満野。

王良という星座の五星は、奎宿の北・天の川の中にあり、天子の車御(御:馬を操る)を奉じる官とされる。そのうち四つの星を天駟(駟:四頭式の馬車)といい、傍の一つを王良(別名:天馬)という。その星(天馬)が動くと、馬に鞭を入れたことになり、車騎が野に満ちる。

たぶん『易林』の詩にある「道」は、馬を数える「頭」の意で、「天馬にひきいられた五匹の馬は、焔火をまとってあちこちに居る」みたいな感じだと思います。その馬たちがあちこちを往来して上下すれば、人々はそれに随って泣いたり悲しんで歌ったりして、五匹の馬たちが振りまく厄災は凶悪すぎるという意味です。

『易林』では裏卦に之く詩では、意味も裏側を書いていることが多いので、家人から恒(益の裏卦)になるときが、険しい恒山の雁門関のようなところに籠っている様子に喩えられる(家人:家の中を整える人、恒:上に雷、下に風があって、柔かい風は激しい雷に随って安定している)ので、その裏側の様子として、家の中を整えるように籠りたいのに、益(上に風、下に雷があって、下の雷が先に行って、柔かい風が後から随う)になって、家人の抑えが緩んでしまうため、元はずっと籠っていたのに「出でて戦い、出でて戦うと、度々不利になって、失うものも多い」様子がこれではないかと感じます。

ちなみに、家人の三爻だけが変わると益になるので、家人の三爻も読んでおきます。

九三:家人嗃嗃、悔厲、吉。婦子嘻嘻、終吝。

家人が嗃嗃(ぎすぎす)とするのは、その厲(厳しく激しいこと)を悔いるけど、吉になる。婦人や子たちの嘻嘻として遊んでいると、終りには吝(難)が来る。

三爻は陽なので強くて、さらに内卦(下卦)を抑えるようにあるので、家人が嗃嗃(ぎすぎす)して厲(厳)しすぎるのを悔いるけど、それでも家をまとめるという面では吉(もし、家にいる婦人や子が遊び過ぎていると、ついには凶になるので、多少厳しいけどそれでいい)みたいな意味です。

家人之益では、家人で内に抑えようとしても、上にある風が下の雷を抑えきれずに却って勢いを増やしてしまう益になるので、城外に出ることを固く禁じた李牧のように多少厳しくても、うかうかと出させないほど抑えた方がいいみたいな意味で、もし出てみると家人之恒とは逆に外はとても危ないだと思います。

余談

風沢中孚の爻辞については「或泣或歌」があるのは三爻なので、それをみていきます。

六三:得敵、或鼓或罷、或泣或歌。
敵を得て、或いは鼓して或いは罷(止)み、或いは泣いて或いは歌う。

王弼注(『周易正義』より)では、中孚の三爻と四爻はどちらも陰だけど、それぞれ別の相手と結び合ってあるので、同族どうしで却って争うことになります。三爻は四爻に向かって鼓を打って攻め込むけど、四爻のほうが上にあって動かせないので、攻めたと思ったら罷めて、逆に攻められると思って怖れて泣くけど、四爻は攻めて来ないので、安心して歌うという意味です。

あるいは荀爽の注では(『周易集解』より)、三爻・四爻はともに陰なので敵となり、四爻のほうは陰で偶数の場にいるので、鼓を打って歌いながら攻めてきて、三爻は陰なのに奇数の場にあるので弱くて、罷めて泣くという感じで解釈しています。

王弼は「或鼓或罷、或泣或歌」をすべて三爻のこと、荀爽は「或鼓或罷、或泣或歌」の鼓・歌は四爻、罷・泣は三爻だと思っているようです。『易林』の注では「或泣或歌」は歌哭と同じだというので、歌も「悲しい歌を歌いながら泣く」みたいな意味で読んでいるらしくて、そのあとの「凶悪なこと凄まじい」との繋がりではそれがいいと思います。

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ぬぃ
占い・文学・ファッション・美術館などが好きです。 中国文学を大学院で学んだり、独特なスタイルのコーデを楽しんだり、詩を味わったり、文章書いたり……みたいな感じです。 ちなみに、太陽牡牛座、月山羊座、Asc天秤座(金星牡牛座)です。 西洋占星術のブログも書いています